パピとママ映画のblog

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検察側の罪人★★★★

2018年08月25日 | アクション映画ーカ行

『クローズド・ノート』『犯人に告ぐ』などの原作で知られる雫井脩介のミステリー小説を、木村拓哉と二宮和也の初共演で映画化。東京地方検察庁を舞台に、人望の厚いエリート検事と彼に心酔する新米検事がある殺人事件の捜査をめぐってすれ違い、やがて二人の正義がぶつかり合うさまが映し出される。『突入せよ!「あさま山荘」事件』などの原田眞人監督が、正義の意味を問うドラマを骨太に描き出す。木村と二宮の演技対決に注目。

あらすじ:東京地方検察庁刑事部に配属された検事の沖野啓一郎(二宮和也)は、有能で人望もある憧れのエリート検事・最上毅(木村拓哉)と同じ部署になり、懸命に仕事に取り組んでいた。あるとき、二人が担当することになった殺人事件の容疑者に、すでに時効が成立した事件の重要参考人・松倉重生が浮上する。その被害者を知っていた最上は、松倉に法の裁きを受けさせるべく執拗(しつよう)に追及するが、沖野は最上のやり方に疑問を抱き始め......。

<感想>原作は未読ですが、主人公・木村拓哉と二宮和也のお二人に、かなり興味があり鑑賞しました。「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」「日本のいちばん長い日」「関ヶ原」など、話題作や名作を多数手がける原田眞人監督がメガホンをとり、東京地方検察庁を舞台に、信頼関係に亀裂が入り、対立する検事2人の葛藤を描いている。

道を踏み外していくダークヒーローが新鮮な木村くん。二宮くんが被疑者の松倉に対して罵倒の限りを尽くす取り調べでのシーンも圧巻でした。松重豊さんら演技派が脇を固めるなか、松倉役の酒向芳さんの不気味さが凄くて巧いのだ。

都内某所での老夫婦の刺殺事件が発生。捜査本部は金庫から見つかった数枚の借用書から金銭絡みの犯行と睨む。そして最上は容疑者リストの中から“松倉重生”の名前発見し、驚愕する。

「HERO」で演じたカジュアルな検察官、久利生公平とは真逆の検事であり、最上を演じた木村拓哉さんはいつものかっこいい頑張り屋の彼でした。現場では元検察官の弁護士からアドバイスを受けて役作りの参考にしたそうです。

東京地検きってのキレ者であり、昇進間近。年上の妻とは家庭内別居状態で、血の繋がらない娘に手を焼く父親。愛読書は「誕生日辞典」。

そして、入庁5年目の若手賢治沖野啓一郎を演じたのが二宮和也。順調にキャリアを重ねて上京。先輩の最上を尊敬し、心酔している。ストレートな正義感を隠さず、物じしない性格である。

沖野をバックアップする検察事務官、それに謎多きところもある橘沙穂には、吉高由里子さんが。希望していた刑事部への異動が叶い、沖野の担当事務官に。直球の発言で周囲をハラハラさせるが、誰にも言えない秘密もある。

老夫婦刺殺事件と23年前の少女殺人事件に奇妙な因果を感じた沖野は、橘と共に独自の捜査を開始するが、最上も己の正義を貫くため、とある男に接触を試みるが、・・・。

老夫婦殺害事件を巡り揺らぎ始める師弟関係。最上の期待に応えるべく、容赦ない事情聴取で被疑者の松倉を追い詰める沖野。しかし、いつまでも完全拒否する彼に沖野は、犯人は別にいるのではないかと思い始める。

23年前に発生したもう一つの未解決事件。大学生だった最上が住むアパートの管理人の娘が殺された。その際に、重要参考人として尋問を受けたのが松倉であった。しかし、証拠不十分で逃げ切り時効になってしまう。

この映画の中では興味深いことに、木村拓哉の演技については、従来の木村が身上としてきたちょっとした細かい表情や動作からなるニュアンス演技が、編集によってばっさりと切られていた。撮影時にそういう木村の細部の持ち味を封印してしまうと、さぞや窮屈でやり難かろうから、おそらく原田監督はいつも通りに木村の演技を放牧して、編集をもって演技のくせを「剪定」していったに違いない。

それに、いつもソリッドな演技を見せる二宮和也くんは、この「剪定」によってより演技の精密さを増し、自在な演技が似合う吉高由里子もぐっと引き立って見えた。あの甲高い上ずった声もいい。

それにしても、松倉役の不気味な怪演も忘れてはいけない。取り調べ中に、松倉が口を「ンパッ」と気持ち悪く鳴らし、やがて沖野がそれを真似して返すキレっぷりも見もの出すぞ。

闇ブローカーの諏訪部の松重さんは、得体の知れないジジイの役。沖野を見てベビーフェイスでいいね、とか、最上のポチになっているなどと、沖野をイラつかせる計算づくの演技も素晴らしい。ラスト近くでは、諏訪部を巧い具合に利用し利用されていく最上=木村拓哉の素晴らしさ。最上にヘリ下って、諏訪部は「私は、あなたのポチですから」なんて言う。

そして、最上がどうしても松倉を犯人に仕立てて、法廷で死刑宣告にしたいと思っていることを見抜く沖野。確かに23年前の少女殺人の犯人なのだが、時効を迎えており何もできない歯がゆさに苛立つ最上の心情。

まさか、検事が自分の感情のために殺人を犯すことがあるとは思ってもいなかった。この件に関しては、もっと詳しく描いて欲しかったが、直ぐに実行に移す最上に呆気にとられる。実際には、諏訪部に用意してもらった拳銃で、老夫婦殺人の真犯人を誘い出して、車に乗せて自分の別荘地で消してしまおうというもの。しかし、検事という立場である最上の心情を示すのは、トイレで嘔吐したり、森の中で怯えたりと、まさにこれまでに見たことのない木村拓哉がいたのだ。殺した男を埋める穴を掘るシーンの木村くん、腕が筋肉隆々でしたね。

そして、最上を追っている橘が、まさか、検事の悪(冤罪)を暴露することを週刊誌に投稿する計画を練っているとは。このことは、最上が、諏訪部に頼みいろいろと探りを入れていたので、橘にズバッと言ってしまう。だから、橘は仕事を辞めることになり、沖野も自分が憧れている最上のことを信じられなくなり、やはり検事を辞めてしまうのだ。

その後に出て来るのが、松倉の国選弁護人、小田島を演じている八嶋智人である。川沿いの倉庫の事務所に行く沖野と橘の2人。それに、沖野と検察事務官の橘とのラブシーンも可愛い仕上がりでしたね。

一番に興味があったのが、最上の親友が飛び降り自殺をして、その葬儀に出るところ。そこには、壮大なる寺院に泣き屋という劇団員みたいな女たちがいて踊るシーンとか、寺院でのひと騒動も興味深かったです。

少なくともキムタクの演技には評価が別れるが、今回のキムタクの見違えるような演技には惚れ惚れした。実年齢に沿った中年男を、悪目立ちせずに演じているのも良かった。中盤に訪れる二宮くんの大きな変化や、クライマックスが呆気なく処理されていて、もう終わりかと思わせる忙しさに余韻が欲しくなるも、観ている間はひたすらに乗せられて見入ってしまった。ラストの二宮くんの叫びは、どこにも置き所のない感情を、ただ純粋に洩らす。いったい、この感情をどこに持っていけばいいのだろうかと。

 

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